翔んでアルミナリア
…あれ?

いつの間にか、あたりに薄靄が立ちこめていた。
なんでだろう、近くに水場もないはずなのに。

視界を奪われ周囲がよく見通せない。ぼんぼりや提灯で飾られた出店が近くにあるはずなのに。
それどころか、あれだけいたはずの人の気配も感じられなかった。
明らかに様子が変だ。

「蓮くん」と隣の彼に呼びかけると、眉をひそめた彼と視線がかち合った。

わたしたちはどちらともなく、互いの存在を確かめるように手を握り合った。立ち止まって周囲を見回す。

変だな、と彼がつぶやく。「なんでこんなに煙ってるんだ」

「だよね」
蓮くんと手を繋いで少しばかり安堵を覚える。それでも迷子になってしまったような心許なさだ。

「目にしみないし、異臭もないから有毒ガスじゃないと思う」
彼が冷静に告げる。

そんな可能性を考えもしなかった自分と彼との思考力の差に、地味にショックを受ける。
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