翔んでアルミナリア
勾配のある庭園を何度も登っては下り、絵画を飾っているロングキャラリーを観賞しながら往復し、足腰が萎えないように努めていたのだろう。

そして今、確かに皆を導いている。
陽射しがなくなったので、頭巾を取り、月の光にも似た淡く美しい髪を背にたらして。

しかし視界は急速に悪くなっていった。

エストライヘル師が「あれを」とセレマイヤに命じる。
セレマイヤが背嚢(はいのう)から取り出したのは、鶏の卵より一回りくらい大きい石だった。綺麗に面をとって磨いてある。
みるまに手の中でぽうと光を放つ。

「燐光石だよ。アルミナリアの宮殿の天井に嵌めこまれていたのと同じもの」
蓮くんが耳打ちしてくれる。

日中の光を蓄えて発光する希少な鉱物を、さらに導力で組成を変化させ光度をあげたものだそうだ。

「手で持っているのは、いささか不如意であるな」
とエストライヘル師がつぶやく。

「自然環境を荒らしたくないのですが、致し方ありませぬ。少しなら大地も赦してくれるでしょう」
セレマイヤは手近な低木の枝を何本か導力で捻じ合わせ、即席の杖をこしらえた。杖の頭に燐光石を編み込む。
持つにも照らすにも、具合がよくなった。
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