翔んでアルミナリア
燐光石の杖は中で突っかかるだろうということで、セレマイヤが導力で半分くらいの長さに加工し直した。

蓮くんはそれを片手に、亀裂から地下へ奥へと身体を滑りこませてゆく。
「下へ続いています」
とすぐにくぐもった声が聞こえてきた。

ずりずりと岩壁を擦る音は、わたしの耳にはほどなく遠く聞こえなくなってしまったが、リュシウス帝は違うようだ。

「順調に下へ降りているようだな」
亀裂に耳を近づけ、ときに地に伏して音響を拾っている。
とにかく常人離れした知覚能力だ。

不安でたまらない時間だったが、はたして蓮くんは砂粒を髪に絡ませて、ふたたび亀裂から頭をのぞかせた。

「急角度や垂直に落ちこんでいるところもなく、勾配はゆるやかで、底まで続いています。かなり広い空間が広がっているようです」
しっかりした口調で報告する。
「おそらくかつては川が流れていたと推察されます。地質はたぶん砂岩で、流れ込んだ水や風で浸食されてできた地下洞窟だと思います。壁面は螺旋状に浸食されており、手触りは滑らかでかるく撫でただけで砂粒が削れるように手に付きました。
そして僕が潜ったこの穴は、湾曲こそしていますが段差ができていたんです」
持ち前の観察力を遺憾なく発揮してみせる。
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