翔んでアルミナリア
「言われてみれば、導力の痕跡を感じまする」
エストライヘル師が亀裂に手を添わせる。

「誰かが道を残したということか。ここが入り口で間違いなさそうだな」

いよいよ地下へ潜るのだ。
めいめいが馬の手綱を近くの低木に結びつける。
夜明け前にはまた地上に戻り、この子に乗って帰りたいと、ここまでの道のりを運んでくれた相棒の首すじを撫でて願った。

今度も当然、先導は蓮くんだ。次にセレマイヤ、その次がエレオノア姫、そしてエストライヘル師が続く。
前後を導師に守られていれば不測の事態にも対応できるだろうという、皇帝の配慮だった。
その次がわたしで、殿(しんがり)が皇帝である。

エストライヘル師の姿が見えなくなってから、わたしも亀裂の中へ足を下ろした。

身体全体を岩壁に突っ張らせるようにして、亀裂から下へ降りてゆく。

足が着いて、そこからは緩やかな傾斜をずりずりと道なりに下ってゆく按配だった。
一気に滑り落ちないように、ところどころ足を掛けられるくぼみがある。蓮くんが言ったように、天然の亀裂に誰かが導力なり手なりを加えて作った通路なのだろう。
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