翔んでアルミナリア
地上からのかすかな明かりもすぐに届かなくなり、闇の中で感覚だけを頼りに地下に降りてゆくのはかなりの恐怖だった。
全身を冷たい汗が伝うのが分かる。

焦りすぎると前をゆくエストライヘル師の頭を踏みそうなので、急ぐ気持ちを必死に抑えて慎重に足を下ろす。

塗りこめられた闇の中にいると、普段いかに視覚に依存しているか実感する。

なけなしの聴覚と触覚を頼りに、下へ下へと足を進める。
穴が広くなったのか、心なしか呼吸がらくになってきた。

目を向けている足元からにじむように光が見えた時は、大げさでなく涙が出そうだった。

きっと燐光石の明かりだ。勇気づけられて、いちだんと広がった穴から、わたしは洞窟の底へと降り立った。

先に行った四人の姿が近くに見えて、ひとまず安堵する。
蓮くんの隣に身を寄せたところで、リュシウス帝も穴から姿を現した。

「全員無事なようだな」
落ち着いた口調だ。

リュシウス帝は、セレマイヤが手にしている灯りを借りてぐるりと巡らせ、鋭い視線を洞窟内のすみずみに向けた。
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