翔んでアルミナリア
蓮くんが先だって言ったとおり、岩肌はすべらかで地層の帯がきれいに見えた。
水と風に侵食され、岩壁はドレープのようにうねっている。

燐光石のにぶい光の中で浮かび上がる光景は、幻想的ともいえる美しさだった。


周囲を確かめたのち、皇帝がエレオノア姫に視線を向ける。
どうするのだ、と言わずともまなざしだけで会話が成り立つみたいだ。

「奥へ進みます。この先にもう少し開けた空間があるはずです。そこから進むべき道は、月の光が教えてくれます」
(そら)んじるエレオノア姫の口調に迷いはない。

灯りを手にしている皇帝を先頭に洞窟の奥へと歩き始める。
この場所では皇帝の知覚能力はいっそう頼もしかった。

思えば誰もが、個々の資質を存分に発揮している。
蓮くんの先遣の報告には、陛下でさえ熱心に耳を傾けていた。

今のところ、なんの役にも立っていないのが約一名。ここまで来てわたしはなにをやっているのかと、自問してしまう。
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