翔んでアルミナリア
そういえば、陛下とエレオノア姫も今手を繋いでいるのかな。
あるいは陛下は姫様をしっかり腕に抱きしめているかもしれない。

現代の日本の感覚でいえば、陛下のなさりようはどうかと思うところはあったけど。この旅を通して陛下のエレオノア姫への想いの強さに心打たれたのも事実だった。

そして姫様の秘めた才智と芯の強さにも、ただただ敬服している。
まぎれもなくお似合いの二人だ。おせっかいだけど、小国の王女という出自にとらわれず、エレオノア姫を皇后に迎えてほしいと思わずにはいられなかった。

…とまあ雑念でしかないことをつらつら考えて時間をつぶした。
エストライヘル師とセレマイヤは、瞑想でもしているんだろうか。
蓮くんから、導者、そして導師になるための修行に、光を閉ざした空間で瞑想をすると聞いたおぼえがある。
確かに精神力は鍛えられそうだ。

光の速度は一秒間に地球を七回り半、とそれくらいの知識はある。
であるから、その瞬間をとらえることはできなかった。気づいたらもう、そこにあったという感じだ。

光の道が現れたのだ。闇の空間に、それは恵みの使者のように訪れた。
地面の亀裂から、波打つ岩壁のすきまをすり抜けて一条(ひとすじ)の光が洞窟の底まで射しこんでいる。

これが月の巡りーーー感動さえおぼえながら、反射的に立ち上がる。
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