翔んでアルミナリア
「本物だ、と思う」

石垣や木肌や花びらに触れたのち、蓮くんが告げる。

「ここどこだろう? なんでわたしたちこんな場所に来ちゃったんだろう?」
蓮くんが答えを知っているわけないのに、言わずにいられなくて口にしてしまう。

かたわらの石垣に手を置いて、蓮くんは深い思索に沈んでいるようだった。
心当たり…まさかね。

「歩いて…みようか。危険な場所じゃなさそうだし」
蓮くんがためらいがちに口にする。

たしかに猛獣が生息しているようには見えない。こんなときでなければ、写真を撮りたくなるような美しい場所だ。

わたしたちはまた手を繋いで歩き始めた。気分はさしずめ、ヘンゼルとグレーテルだ。
森に捨てられた兄妹は、たしか魔女が住むお菓子の家にたどり着いたけど、わたしたちははたして———
< 16 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop