翔んでアルミナリア
想像するだけだけど、両耳に強烈な平手打ちをくらいながら、暗順応した目に強烈なフラッシュを浴びせられたような…

「ギャーーーッ!」
という男たちの悲鳴が折り重なって聞こえてくる。岩壁に反響してくぐもっているけれど、少年の声はその中に混じっていないようにわたしの耳には聞こえる。
マリス王子さえ無事なら、他の連中がどれだけ苦しもうと知ったことじゃない。

そして———岩壁をへだてて、その音がはっきりと聞こえたのだ。
軽快な小走りの足音だ。リュシウス帝のような精緻な聴覚は持ち合わせていないけど、敵がいる方向からやってきて隧道の奥へと走っているように響いた。

間違いない、マリス王子だ! 脱出に成功したんだ。

逆転勝利を確信して立ち上がろうとするわたしを、「まだだめだ!」蓮くんが羽交い締めするように押さえつけてくる。
どうして? と一瞬思ったが、蓮くんも導者のはしくれ、予感があったのかもしれない。

次の瞬間、地面が波打つような感覚に襲われた。轟音と衝撃に伏せている身体が跳ね上がりそうだ。
恐怖にかられながら、最悪の事態が起こったことを悟った。
おそらくクルシュタルが導力を暴発させたのだ。目が見えない状態で、ロケット団を乱射しているような状態だろうか。
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