翔んでアルミナリア
「蓮くん!?」
慌てて地面に手をつくと、それを支えに体をひねりながら彼の下から抜け出した。

どうしたのと問うまでもなく、眼前の禍々しい光景に息を飲む。
近くに転がっている燐光石の欠片が、穴の中をぼんやりと照らしている。

地面に力なくうつ伏せている蓮くん。その背に、氷柱のような岩壁の破片が深々と突き刺さっていた。

「蓮くんっ」
叫びながら彼にとりすがる。嫌だイヤだと頭の中で声にすらならない絶叫が響く。

「...実、花子…」
首だけ横に向けている蓮くんが、大儀そうにくちびるを動かす。

「お願い、しっかりして。きっとだいじょうぶだよ、すぐにみんなを呼んでくるから」
エストライヘル師とセレマイヤがいれば…いや、導力は医術じゃない。止血くらいはできるかもしれないけど、こんな洞窟の奥で深手を負って…

いいんだ、と吐く息とともに蓮くんがつぶやく。
「実花子を守れたら、俺はそれで…」

「蓮くんとわたしはずっと一緒だよ。もう離れない。蓮くんと離れたくない」

「…その言葉が聞けただけで、ここまで来た甲斐があったな…」
うっすらと笑んでいる。

こんな場面で、さっきの皇帝の台詞をなぞらないで。
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