翔んでアルミナリア
「…蓮くん?」
隣に座る少年にささやきかける。

自分と同じ理不尽な境遇を分かち合っている少年の存在が隣にあるから、わたしはかろうじて正気らしきものを保っていられた。

「うん?」
彼が答える。

牢屋にはもちろん番人がいるけど、通路の突き当たりに小さなテーブルと椅子が置かれ、ほぼそこに座っている。思い出したように様子を見にくるだけだ。

「ここ、どこだろう?」
自分でも情けなくなるくらい、弱々しい声だ。

「たぶんアルミナリアだ」

「アルミナリア?」
予想外の返事に驚いて、首を横にねじって彼を見つめる。ヨーロッパのどこかにそんな国あったっけ!?

「うん、たぶん」
どこか諦めたような口調だ。視線はわたしではなく、前方の石の壁に向けられている。

「どこ、そこ?」
牢屋番を警戒して、ささやき声で訊く。

「俺がゲームの中で作った架空世界」

「へっ?」
期待していただけに、失望も大きい。こんな状況でふざけるのはやめてほしい。
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