翔んでアルミナリア
なんでいきなり最高権力者が降臨しているのか。完全に想定外だ。

「陛下、この者どもは、昨日後宮にあります庭園に侵入した|不逞(ふてい)(やから)であります」
端の方に座っている恰幅のいい中年の男が口を開く。えーと、たしか宰相のゲッペルだっけ。やや旧弊な思想の持ち主だが、忠誠心篤い人物。

「いかな手段を用いたかはこれから尋問いたすとして、陛下がわざわざ眼前に召されるほどの…」

「それなりの(よし)あってのこと」
リュシウス帝が宰相の言葉をさえぎる。

「直入に問う。其方ら、どこからやって来た?」
こちらを見据えて、皇帝自らが尋問の口火を切る。

「———異界から参りました」
落ち着いた口調で蓮くんが答える。

ほう、という表情を皇帝陛下が浮かべる。
「我が師エストライヘル、どう捉える、この子どもの(げん)
隣に座る人物へと投げかける。

(まこと)でありましょう」

名前を呼んでくれたおかげで、その人物が大導師エストライヘルだと分かった。金モールの肩章で飾られた軍服調の上着を身につけている皇帝とは対照的に、暗い色の簡素なローブをまとった老人だ。

導師の中でも、能力、智力、人格全てにおいて高い次元にある者のみが大導師と称される。
広大なアルミナリア帝国でも、正式に大導師の高位にあるのはエストライヘル師ただ一人であり、皇帝も全幅の信頼をおく人物…という設定だ。
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