翔んでアルミナリア
「胸に兆すものがあった、ということでございます」

「そなたの直感は疎かにできん」

符節(ふせつ)が合いすぎておりまする。こたびの事態に次いで、時空を超えた迷い人の来訪。なにか人智の及ばぬ力、神の見えざる手を感じると申しましょうか」
師は厳かに告げる。

“こたびの事態” ってなんだろうか。
創造主である蓮くんは、この世界の設定やキャラクターは固めて、ストーリーやイベントを練っている段階だったと言っていたっけ。
未完成だったこの世界は、蓮くんの脳内を超えて、どこへ動いていこうとしているんだろう。

「神の見えざる手…」
リュシウス帝が意味を噛みしめるように繰り返す。

「なればこそ、御前にまでこの迷い人を召した次第です」

「戻る道がない、のであれば宮殿で召抱えるのが妥当であろうな」
あっさりとリュシウス帝が口にする。

「エレオノア姫から、寛大な処遇を求める嘆願が届いております」
初めて口を開いたのは、エストライヘル師と同じようなローブをまとった青年だった。
おそらくは導師…ということはこの人がセレマイヤか、と見当をつける。若輩だけれど、エストライヘル師の衣鉢を継ぐと目されている優れた導師だ。
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