翔んでアルミナリア
それにしてもあのお姫様、美しいだけじゃなくて優しい心の持ち主でもあるんだな。脳裏に美しい姫君の姿がよぎる。

エレオノア姫の名を耳にして、リュシウス帝の眉宇(びう)がふっと和らいだ。がすぐに厳しさを取り戻す。
「どうせ弟を重ねているのだろう」
つまらなそうに言葉を吐く。

まあ確かに、蓮くんを見て弟の名前を呼んでいたっけ。鋭いな、陛下。

「異界から来たということを別にすれば、まずもって健康な少年と少女ですな」
品定めをするように、エストライヘル師が口にする。

宮殿で召抱える…下働きかな。牢屋を経験した後では、命と衣食住が保証されるなら洗濯でも皿洗いでもなんでもやります、という心境だった。
それに無一文で知らない世界に放り出されても、どの道生きていけないだろう。

「この少年には、才があるのが見えまする」
師がなにげなく続ける。

「才、とな」
リュシウス帝は興味をそそられた様子だ。

「は、無から有、とまではいきませぬが、有を膨らませて昇華させる創造力が非常に優れております」
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