翔んでアルミナリア
部屋の前の通路には兵士が見張りでつくという。
部屋の中は自由に使ってよいが勝手に外に出ないよう言い渡された。別に出たいとも思わないのでおとなしくうなずく。

小さいけれど清潔で、ベッドが二つ、小さなテーブルと椅子など、簡易的な家具も備えられている。旅館の一室のように見えないこともない。
天井に近い位置に、明かり窓が一つあるきりで、外の景色をうかがうことはできかった。

ありがたいことにバスルームも付いていたので、夜は二日ぶりにシャワーを浴びてベッドで寝ることができた。
しかし…十七歳と十四歳の少年少女が並んだベッドに寝るって倫理的にどうなのか、とちらっと思ったり。とはいえ他に寝るところはないし、どのみち明日からは離れ離れだ。

心細いな…涙がひとすじ枕にこぼれた。

三日目の朝、わたしたちは別れた。わたしは後宮へ、蓮くんは導者の学び舎へと。

そしてわたしは彼女、パンバリーニョに引き合わされたのだ。

看板に偽りなしというべきか、パンバは南方の国エンドーラの出身だと語った。
「皇帝陛下はあまねく全土から臣下を集めておられるの」

「なぜですか?」
年上だし先輩だし、さすがに丁寧語は崩せない。

「常に視野と見識を広く持つためだそうよ。出自にこだわらず優秀な者を取り立てていらっしゃるし、竜の血族に恥じない為政者でいらっしゃるわ」
畏敬の念を隠さずパンバは語る。

英明な若き皇帝。蓮くんの設定通りだ。

「ええと、わたしたちは具体的にはどんな仕事をするんでしょうか?」
新米宮女ミカコとして尋ねる。

後宮の宮女は、正妃・側室という皇帝のお妃方に仕える立場だとパンバは説明してくれる。アルミナリア帝国の皇族は一夫多妻制なのである。
だがこのリュシウス帝の御代において、皇帝は未だ正妃をもたず、後宮には寵姫がただ一人。
カリンガ王国の王女、エレオノア姫だ。
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