翔んでアルミナリア
この辺りの話は、蓮くんに聞いたことをおさらいする感じで耳を傾ける。

たった一人の寵姫のために、宮女は何十人もいるというから、皇帝の寵愛ぶりがうかがえる。

パンバははっきりとは口にしなかったが、仕事としてはかなり楽な部類に入るようだ。宮女一人当たりの仕事量は少なくなるわけだから当然だろう。
おまけにエレオノア姫は、おっとりと優しい気質で、一度として声を荒げたことさえないという。

そんな姫様のお心を和ませるよう務めるのが、宮女の役目だ。

「歌が上手い宮女が歌って差し上げて、楽器の心得がある宮女が伴奏を務めるの。編み物が得意な宮女が、姫様に出身地伝統のレース編みのお手ほどきをしたり」

…どうしよう、できることがない。
わたしの取り柄って…中学校まで陸上部だったから、体力・持久力は並以上という自信があるけど、宮女として役に立つだろうか。

わたしの不安を見てとったようにパンバが明るく言う。
「ミカコはイカイというところから来たのでしょう? そこの話をして差し上げればいいわ。姫様は好奇心旺盛な面もおありになるの。わたしも故郷の話をしたことがあって。旅をしているみたいで楽しいと言ってくださったわ」

そんなのでいいんだろうか。
とはいえ、身の回りのお世話(髪を結ったり、身支度を手伝ったり)はむろん専属が揃っているということで、出る幕はなさそうだ。
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