翔んでアルミナリア
お父さんとお母さんと暮らして、学校に通って、という当たり前の生活は、祭りの日を境に唐突に断ち切られてしまった。それなのに、心細さよりも、命の危険がなく、衣食住と職が保証されているだけで天国のように感じられる。
牢屋暮らしを経験したせいか、それとも自己防衛のために感情を麻痺させているのか、よく分からない。

わたしが住まうことになったのは、後宮の宮女たちの居住棟の一室だった。
小さいながらも一室を与えられている。ちょうど元の世界の子ども部屋と同じくらいの大きさだ。
隣室がパンバなのがありがたい。

宮女であれば基本的に宮殿内の出入りは自由だ。
だけれど宮女が後宮から宮殿に出ることはできても、男性は警備の兵士などの例外を除いて、後宮に入ることは禁じられている。
自由に出入りできる男性はただ一人、皇帝のみだ。

十四歳の少年であっても例外ではない。
というわけで、わたしと蓮くんが会うためには、わたしが彼の元に足を運ぶことになる。

ちなみにこの世界の主な通信手段は手紙である。電気がないということは、当然電話もメールもSNSもないわけで仕方ない。
会えない日には、お互いせっせと手紙を書くようになった。まさか蓮くんと文通をする日が来ようとは。
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