翔んでアルミナリア
「多いっていうか、もう数Ⅱの時点で付いていけないの。いくら考えても分からないんだもん。試験は、公式を丸暗記して基礎問だけでぎりぎり点数を稼いで、応用問題は全滅」
言いながら気持ちが暗くなる。
「でも課題は解けませんでしたー、で白紙で出すわけにいかないから。数学の先生厳しいし…」
かるく嘆息する。

「手伝ってあげようか?」

「えっ、だって高校の数学だよ?」
気持ちはありがたいけど。

「俺、数学は特進クラスだから。たぶんもう追いついてると思う」
こともなげに言う。

「いいの、ほんとに!?」
教えてくれたら助かる。救いの神だ。三歳年下に勉強を教わるって情けないけど、先生にお説教をくらって再提出を命じられることを思えば、なりふりかまっていられない。

「いいけどさ、そのかわり——」
声変わりを終えたばかりの少年の声が、ひどく低く耳を撫でる。
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