翔んでアルミナリア
「実花子ー!」
「蓮くん」
宮殿の東の大楼門の前に広がる遊路のベンチで二日に一度、お昼に待ち合わせするのが、わたしたちの習わしになった。
駆け寄ってきた彼と、ぎゅっと手を握り合う。

見慣れてきたな、とわたしの宮女姿をまじまじと見つめて、彼がつぶやく。

わたしが身につけているのは、宮女の制服のようなワンピースだ。
裾は足首まで丈があり、袖は手首まで、襟は首元まできっちり詰まっている。装飾性はほとんどなく、色合いも鳩色やらベージュなどとにかく地味だ。
全体的に貞潔な印象を与える格好だ。

対して蓮くんは、導者共通の質素なローブをまとっている。
人力を超えた能力を備える導者たちの生きかたは、求道者としての高潔さが求められるのだ。

最初は互いにコスプレをしているみたいで落ち着かなかったけど、それもだんだん慣れてきた。

アルミナリアに来て、一週間ばかりが過ぎようとしている。

「どうそっちは?」

「まあ、ぼちぼち」
蓮くんは淡々と答える。
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