翔んでアルミナリア
彼は宮殿内にある、導者の弟子たちが集う寄宿舎のようなところで寝泊まりしている。
帝国全土から資質を認められた子どもたちが集められて、共に導力を身につけるための修行をしている。
同じ志を持つ者同士、何人か友達もできてうまくやっている様子がうかがえる。

はっきり口にはしないけど、導力を身につけ磨き、いつか元の世界に戻れるようになる、というのが蓮くんの新たな目標になったみたいだ。
あのエストライヘル師ですら、無理な相談と言っていたことがはたして可能なのかは疑問だ。

だけれど一日を無事に終えることしか考えられないわたしより、はるかに頼もしい。

「今は行儀作法とか、姫様の好みのお茶の淹れかたとかを、パンバとか他の先輩たちに習ってるの。一通り身についたら、姫様にお目通りだって。緊張する〜」
首をぎゅっと縮める。

「心優しいキャラ設定にしてあるから、心配すんなって」
軽口を叩く余裕まで戻ってきたみたいだ。

ベンチに腰かけて、それぞれ持参してきた昼ご飯を食べ始める。二人とも簡単な具をパンに挟んだものだ。
わたしは後宮の、蓮くんは寄宿舎の(まかな)い処で、三度の食事を摂っている。頼むとこんな風に油紙に包んでお弁当にもしてくれる。
給食みたいなもので、味はそこそこだけど栄養バランスが取れているメニューだ。
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