翔んでアルミナリア
「一人前の宮女になれたらね、少しお給金も貰えるんだって。パンバはそれを故郷に仕送りしてるって言ってた」

「いいなー、俺は学生だからな」
蓮くんが口を尖らせる。

立場的には、わたしは宮殿に雇用されている宮女で、蓮くんは宮殿内に設立されている導者のための学び舎の生徒だ。
とはいえ、生徒たちは現代の日本でいえば特待生のような扱いで、授業料も生活費もすべて免除だというからありがたい。

まだ先行きは不安なことだらけだ。
それでも、互いにこの世界に居場所を見つけられた安堵感がじわじわとわいてくる。

昼ご飯を食べ終えて、ぼんやりと行き交う人々を眺める。

大楼門を貫いて、澄んだ水をたたえた水路が走り、その両側が広い遊路になっている。
官吏や貴族、わたしのような宮女、鎧を身につけた衛兵…まれにローブをなびかせる導者の姿も混ざる。

いったいどれだけの数の人が宮殿に出入りしているのか、見当もつかない。
見当がつかないといえば、この宮殿の全容もしかりだ。
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