翔んでアルミナリア
自分の名前の由来になった植物だから一通りのことは知ってる、と淡々と言いつつもちょっと得意そうだ。
「だから今咲いているのは今日で散っちゃう花。最後の日だけ昼過ぎまで咲いてるんだ」

「そうなんだ…」
そう聞くと、何も言わずに可憐な花を咲かせている蓮がいじらしく見えてくる。

わたしの気持ちをどう読み取ったのか、蓮くんが水路のほうへすっと片手を伸ばした。

ん? と思うと、咲いている蓮の花のひとつが、見えない手に折られたようにことりと茎から外れた。
水面に落ちることなく、そのまま宙をすべるようにこちらへと———

そして伸ばした蓮くんの手の中に収まった。

「すごーい」
わたしはぱちぱちと手を叩く。

「コツを掴んできた。手が届かない距離でも導力が使えるようになったんだ。今日散る花だから、摘んでもバチは当たらないだろ」
ぽんぽんと花を手の中で軽くはずませる。
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