翔んでアルミナリア
セレマイヤもさすがに皇弟を攻撃することはできないため、守りに徹した。エレオノア姫と書庫に籠城し、扉を導力で塞いだのだ。

リラン一行の中には導者もいたようで、塞ぐ力と破ろうとする力の導力勝負になったが、軍配はセレマイヤに上がった。
長引くのは得策ではないと判断したのか、しばしの攻防ののちに、リラン側は引き上げていった。
そしてそのまま宮殿から姿を消した———

「どうして皇弟殿下はそんな真似を?」
当然の疑問として訊いてみる。

「一介の宮女に分かりっこないわ」パンバは首を振る。
「ひょっとしたら、皇弟殿下は陛下の寵姫に横恋慕されたのかもしれないわ。昔から陛下に対抗意識を燃やして、兄が持っているものを何でも欲しがる方だという話だから。帝位まで狙っておられるとか、不穏な噂は今までもあったわ。でもまさか、姫様を拐かそうとされるなんて…」
パンバはぶるりと体を震わせる。

箝口令(かんこうれい)が敷かれたとはいえ、派手な騒動だったため、噂は人の口から口へ広まってしまい、この世界の新参者であるわたしたちの耳にも入ることになってしまった。

そういえば、導師セレマイヤって———
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