翔んでアルミナリア
皇帝の命を受けた直属軍が血眼になって行方を捜している間に、彼らは何食わぬ顔でカリンガに到着していた。
ここでも宗主国の皇帝の弟という立場を大いに利用し、カリンガ側は突然の来訪に戸惑いつつも丁重に迎え出たという。
そしてマリス王子を猟に誘い出し、なんとそのまま連れ去るという暴挙に及んだのだ。
八方手を尽くして捜してはいるが、一行の行方は(よう)として知れない。

「他の大陸に逃亡しないように、すでに主要な港には伝書鳥を使って伝令を出したらしい。だけど消息はぷっつり途絶えて、リラン一行はたぶんマリス王子を連れて大陸のどこかに潜伏中だ」

「でもなんで皇帝の弟は、そんな真似を…」
いちばんの疑問はそこだった。
兄の寵姫を誘拐しようとし、失敗したら次はその弟。行き当たりばったりではなく、計画的な行動に思えるけど、動悸がつかめない。

ここから先は俺の推測だけど、と蓮くんが続ける。
「“神の遺産” に関わってるんじゃないかと」

「神の遺産ってなに?」
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