翔んでアルミナリア
「そういえば蓮くん、皇帝の弟のことは牢屋で話してくれなかったよね。なんで?」
だからわたしはリランの存在自体初耳だった。

「んーまあ、なんていうか…」
蓮くんが気まずそうな表情で頬をかく。

ぼそぼそと語ってくれたところによると、リランは蓮くんの負の側面を投影したキャラクターだという。
「反抗期の象徴っていうか…自分の心のドロドロした部分を詰め込んだキャラ。だからあんまり話したくなくて、サブキャラのつもりだったし」

「反抗期…」

うん、と蓮くんは神妙な顔でうなずく。

我と欲を持て余し、自己愛と自己嫌悪のはざまでのたうち、ときに暴力と破壊の衝動にかられる———十七歳の皇弟。
一般家庭であれば、せいぜい家の壁に穴が開くくらいだろうけど、立場が皇弟ともなると反抗期も内乱になりかねないから厄介だ。

それにしても、いきなり権力者に拉致されたマリス王子は、いまどんな状況におかれているのか。
想像するだけで、心が疼いてたまらなかった。
姫様のためにも、どうか一日も早く無事に戻ってくることを願うばかりだ。
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