翔んでアルミナリア
「あ、そうだ」
少しでも明るくしようと、話題を変える。
「こないだもらった蓮の花を、いま乾かしてドライフラワーにしてるんだ。それを匂い袋にすれば、ずっと持っていられるから」

ありがと、と蓮くんの目尻がやわらかくすぼまる。
「花しかあげられるものがないけど」

「蓮くんが初めて導力使ってとってくれたんだもん。特別な花だよ。わたしもお給金もらえるようになったら、出入りの商人からお菓子とか買いたいんだ。一緒に食べよう」
わたしたちは助け合って生きていくんだ。

「実花子のそういう優しいとこ、やっぱ好きだな」

ひとりごとみたいなそのつぶやきは、ずるいと思う。

なぜわたしたちが異世界に閉じ込められてしまっているのか。

蓮くんのせいなのか、それとも蓮くんの気持ちを受け流しながら、ちゃっかり課題を手伝ってもらっているわたしのせいか。
鶏が先か、卵が先か———

頼るものはもう、お互いしかいないのに。
それでもわたしは、彼の気持ちを受け止めきれずにいる…

そんな思春期をこじらせているわたしたちの預かり知らぬところで、内乱はゆっくりとしかし確実に潜行していた。
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