翔んでアルミナリア
一つのドアの前で兵士が足を止めた。
ノックし「宮女、ミカコを連れてまいりました」と告げる。

ドアを開け、わたしだけ部屋に入るようにうながされた。
蓮くんが部屋のすみに所在なげに立っているのがまず目に入って、ちょっとほっとする。

だけれど他に居並ぶ面々に、緊張で顔がこわばってしまう。

その部屋は、小広間(プチサルーン)といった様子の空間だった。絨毯が敷かれ、ソファと背の低いテーブルが配されている。壁際の暖炉には、あかあかと火が炊かれている。
そこでテーブルを囲んでかけているのは、皇帝リュシウス、大導師エストライヘル、導師セレマイヤ、宰相ゲッペル、騎兵隊長ホーグラント…といった査問のときとほぼ同じ、帝国の中枢だ。

そしてリュシウス帝のかたわらのオッドマンチェアに、固い表情で腰を下ろしているのは、なんとエレオノア姫だ。

後宮に秘されている姫様までいるって、いったい何事なんだ…呆然としながら突っ立っていると、蓮くんに無言で手招きされて、ひとまず彼のそばに向かった。

部屋の中央に皇帝をはじめとした主要人物が集い、わたしと蓮くんは一隅に並んで立っている。
これから何が始まるんだろう。
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