翔んでアルミナリア
「集まったようだな」
皇帝が口火を切る。

「陛下、恐れながら、この場にあの子どもらを召したのはいかな理由でございましょうか」
ゲッペルが重々しい口調で言う。

それについては同意見だ。

「余剰、のようなものだ」

余剰って。分かるような分からないような。ちらっと蓮くんに視線を向けると、小さく首を振ってみせる。彼もさっぱりのようだ。

「貴君らも承知のように、我が弟リランが、カリンガ王子マリスを誘拐して二ヶ月が過ぎた。総力を傾けて捜索にあたっているが、足取りは未だ掴めていない」
淡々といった調子でリュシウス帝が口にする。

「責は痛感しております」
騎兵隊長ホーグランドが眉間に皺を刻んでいる。

「責は彼我にあり、と言っておこう。集まってもらったのは、事態の収拾のためだ。ことは一刻を争うとみている」

だからこそ当事者の一人でもあるエレオノア姫までこの場に召したのか。
くちびるを結んでうつむく姫様の変わらず美しい横顔に、視線が吸い寄せられる。
後宮にいるときと明らかに違うのは服装だ。

わたしが知る限り、姫様はいつも羽衣のような薄物で袖の短いドレスを身につけている。今日の日中もそうだった。
今は生地や仕立ての上質さはみてとれるものの、装飾性と肌の露出が少ない宮女のワンピースと似たドレス姿だ。
男性が集まる場であることを考慮したのだろう。
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