翔んでアルミナリア
「この二ヶ月、我々とて手をこまねいていたわけではない。行方を捜す一方で、リランが逗留した部屋に残った暖炉の灰の復元をエストライヘル師を中心に導師たちが行なっていた。文書が燃やされていた形跡があったのでな」

「難業でありました」
表情を変えずにエストライヘル師が口にする。

そりゃそうだろう。灰を復元ってFBIじゃあるまいし。

「おかげで犯行の輪郭がある程度浮かび上がってきた」

それはすごい。誰も何も言わずに、皇帝の言葉の続きを待つ。

「まず、リランは導師クルシュタルと手を組んでいる。手紙で緊密なやりとりを重ねていた」

「あの、冥の導師クルシュタルでありますか」
ホーグランドが口を挟む。

そうだ、と皇帝がうなずく。

冥の導師クルシュタル。うーん初耳だ。

「クルシュタルは、かつて共に導力の道を極めんと修行をした朋輩(ほうばい)でありました。がしかし、奴は次第に冥の力の研究に傾倒するようになり、最後は袂を分かちその後は生死さえ分からぬ有様」

エストライヘル師の言葉おかげで、クルシュタルなる導師がどういう人物なのかおおよそ分かった。
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