翔んでアルミナリア
「経緯は不明だが、おそらくはクルシュタルがリランに接触し、陰謀を企んだ。リランの最終的な目的は帝位だろうが、クルシュタルはそれを餌にリランを誘い込んだようだ」
情けない奴だ、と皇帝が苦々しげにつぶやく。

皇帝の弟が寵姫の弟を誘拐。互いの弟が絡む内乱は、どう終結するのだろうか。

リランがマリスを攫った目的は、カリンガ王家に伝わる宝だとリュシウス帝は続ける。
宮殿に保管されている古文書を手がかりにしたようだ。
「かなり曲解していたようだが。古語をどう解釈するかで、意味は異なってくる上、根拠の不明な伝承も多い。それはともかく、リランはカリンガの宝に狙いを定めた」

「ということは、カリンガ王家の宝は神の遺産だと考えてよろしいのでしょうか?」
ゲッペルが顔を紅潮させている。

「それについては、ここにいるエレオノア姫から説明してもらおう」

リュシウス帝にうながされて、エレオノア姫がくちびるを解く。

「カリンガの宝の存在は、代々王家に口頭伝承で伝えられております。非常に尊いものであると。ですが、わたしはそれが神の遺産だとは思えないのです」

「なぜです?」
とゲッペル。

「もしも、本当にカリンガの宝が神の遺産ならば、代々の王の誰かが試してみたのではないでしょうか」

もっともすぎる姫様の意見に、異を唱えるものはいなかった。
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