翔んでアルミナリア
第4章/辺境の地、バルバンダ



乾いた地を風が吹き、鉄さび色の砂が舞う。
強い陽に照らされた地面には、隊列の影が濃く長く続いている。

辺境の地、バルバンダ。
行進に次ぐ行進を続けてたどり着いた、目的地だ。

アルミナリアに迷い込んでしまったときは、精神的に疲弊したけれど、バルバンダへの旅程はとにかく体力的に堪えた。
宮殿の(うまや)で一日二日乗馬訓練を受けただけで、すぐに出立となったのだから、無茶苦茶もいいところだ。

隠密の皇帝一行は、側近・護衛を合わせて百名足らずで、これは通常であれば考えられない少人数だという。
この世界には、写真もテレビも存在しないので、ほとんどの民衆は皇帝の顔を知らないのだ。
リュシウス帝が頭巾で特徴的な赤髪を隠し、身を(やつ)せば、皇帝と知られることはない。

女性と少年が混ざっているとはいえ、傍目には任務を帯びた騎兵隊の一行と映るように仕立ててあった。

それでも行軍がスムーズに進んだのは、行く先々の町に皇帝の紋章入りの足輪をつけた伝書鳥を飛ばし、隠密の行幸を町の長だけに伝えていたからだった。
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