翔んでアルミナリア
「カリンガの宝の隠し場所にたどり着くには、ザンテの民の知恵を借りなければいけないのです。そして彼らの言葉で聞かなければ、ザンテの民は真実を教えてはくれません」
あのとき、宮殿の一室で、エレオノア姫は張りつめた横顔でそう語った。
「バルバンダには若き時分、旅をしたことがございます。が、文字を持たず口承伝承を続けるザンテ族の言葉は、極めて難解でありました」
エストライヘル師が驚嘆の響きをにじませる。
一音に多くの意味を持たせ、撥音や拗音を多用するザンテの言語は、博覧強記を誇るエストライヘル師でさえ、習得ができなかったという。
「わたくしと弟のマリスは、ザンテの民の言葉を話すことができます」
カリンガ王家の子女は幼い頃からザンテの言葉を遊びながら学ぶのだと、エレオノア姫は説明した。
ザンテ族の長老を教師として王宮に招き、言葉や歌を覚えていく。返礼にカリンガは決して豊かではない国庫から、ザンテ族に経済支援を続けているという。
すべては王家の宝を守るためだ。
「幼い頃はわけなど知らないまま、わたくしは父君と、ザンテ語で秘密のおしゃべりを楽しんでおりました。なぜその言葉を学んできたのか、明かされたのは十歳の誕生日を迎えた夜のことでした」
あのとき、宮殿の一室で、エレオノア姫は張りつめた横顔でそう語った。
「バルバンダには若き時分、旅をしたことがございます。が、文字を持たず口承伝承を続けるザンテ族の言葉は、極めて難解でありました」
エストライヘル師が驚嘆の響きをにじませる。
一音に多くの意味を持たせ、撥音や拗音を多用するザンテの言語は、博覧強記を誇るエストライヘル師でさえ、習得ができなかったという。
「わたくしと弟のマリスは、ザンテの民の言葉を話すことができます」
カリンガ王家の子女は幼い頃からザンテの言葉を遊びながら学ぶのだと、エレオノア姫は説明した。
ザンテ族の長老を教師として王宮に招き、言葉や歌を覚えていく。返礼にカリンガは決して豊かではない国庫から、ザンテ族に経済支援を続けているという。
すべては王家の宝を守るためだ。
「幼い頃はわけなど知らないまま、わたくしは父君と、ザンテ語で秘密のおしゃべりを楽しんでおりました。なぜその言葉を学んできたのか、明かされたのは十歳の誕生日を迎えた夜のことでした」