翔んでアルミナリア
なぜザンテの言葉を覚えるのか。そして、バルバンダに秘された王家の宝の隠し場所にたどり着く道筋を、繰り返し繰り返し教えられたという。
文字で残してはならない。代々の王族はその掟とともに、宝の存在を子孫に言い伝え続けてきた。

「わたくしがマリスと離れ、アルミナリアの後宮へ参ったとき、弟は十歳になったばかりでした。父君を亡くしていたため、わたくしがマリスに急いで言い含めましたが、おそらく…はっきりと覚えてはいないでしょう。子どもが一度に頭に入れられる内容ではないのです」

感情を押し殺して語るエレオノア姫の言葉に、かえって胸を締めつけられた。
マリス王子は、宝うんぬんどころではなかったはずだ。父を亡くし、母親代わりの姉とも引き離された十歳の少年は、どれだけ心細い日々を送ってきたことだろう。

あげく王家の宝を狙う皇弟一味に誘拐されてしまうとは、どこまで不遇な運命を負っているのか。

王家の宝よりも、マリス王子の消息が気がかりでならなかった。
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