翔んでアルミナリア
馬もむろん一人一頭だ。
乾燥地帯に適応し、持久力とスピードを備えている、ガリップという種の馬だった。
ミルクティーのような柔らかい色の被毛は短く、美しい金属光沢を放っている。

この先、替えの馬はいない。手綱は文字どおり命綱になる。
もし馬がつぶれてしまったら、どうにかしてザンテ族の保護を得られなければ、命の保証はない。

人は馬で移動し、荷物の運搬には、グァナコという動物が使われた。
蓮くんの解説によると、偶蹄目(ぐうていもく)の家畜だそうだ。アルパカとラクダを足して二で割ったような見た目をしている。
だく足歩行で背中にこぶがあるので、騎乗には不向きだけれど、荷の運搬には重宝するそうだ。

最後の補給地点である町を発ち、バルバンダに足を踏み入れてから、進行のスピードはひどく緩やかになった。

理由のひとつは、単純に馬とグァナコと人の体力の消耗を避けるためだ。
そして何より、この地には道とよべるものが存在しないのだ。

正確な地図さえない。さまざまな探検家たちが書き記した資料を繋ぎ合わせ、あとは方位磁石と天体の動きを頼りに進路を決めるしかない。
< 99 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop