綺桜の舞う
16.時計の城
「ここだね〜、私たちの拠点」


叶奏は、バイクから降りようとする蛍に手を差し出しながら、ニッコリ笑う。
今日は叶奏は自分のバイク。
こいつが何で何回もこけるかわかるくらい、気分屋な運転をしているのをヒヤヒヤしながらついてきて、たどり着いた場所は夜桜の拠点……ではなさそうなところ。


「……けっこー、目立ってるね〜」
「まぁでも、建物自体は古いから苔塗れだね〜」


伊織は口を開けたまま、建物を見上げる。


今日は初の夜桜の倉庫にお邪魔する、ということで、綺龍主要メンツと、蛍に心底気に入られた成が、やってきた。
夕はあくびしながら、スマホを触っているところを見たら、どうやら来慣れているらしい。


目の前には石造りの時計台。
巷では、戦前だか、戦後間も無くだかと言うレベルの建物だと囁かれてる建物、らしい。
最近近代化が進むこの町の中心部とは打って変わって町外れのど田舎。
何ならもう森の中。
アクセスはそこまで悪くないけども。


神秘的な緑に囲まれる石造りの時計台。
……。
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