綺桜の舞う
「……総長、室?」
「んー。多分そんなとこだけど、ちょっと違う、のかな?」
「ん?」
「いや、一応誰でも入れることになってるから。
別に、暗黙の了解か、誰も入ってこないけど」


そんなことを言いながら、ぐっと俺の手を引いて俺を引きずり込む。
静かに閉まったドアに鍵をかけてんーっと伸びをする叶奏。


「……んで、どうかした?」
「んー……ちょっと2人になりたかった、ぐらい?」
「最近多いな」
「うん。不安になるから」


青狐との抗争の後、俺が病院に運ばれてから、やけに不安そうな顔をすることが多くなった。


「俺、そんな簡単にいなくならねーよ?」
「最近気づいたの。湊くん細って思って」
「何比較?」
「んー……うん」
「うんじゃない、言ってみ?」
「……朔、と雪兎」


こー、ぎゅっと……なんて、ベッドに座りながらジェスチャーまでして。
不安な顔で俺を覗き込む。
……そんな顔するならやめろっての。
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