綺桜の舞う
◇ ◇ ◇


まぁ、『詮索するな』って言われている段階で、かくしごとは山ほどあるんだろうけど。
その、なんて言うか。
俺たちには絶対言うべきであろうこととか、そういうのも全部隠し通している。
……怖いくらいに、完全に。


「ねね、いおりん」
「ん?」
「僕、ちょっと上あがっていい?」
「どした?」
「思いの外、外の世界が感じられなくて自然を体が欲してる」
「あぁ、うん。いっといで」


ついていく、と言ったのは沙彩ちゃん。
多分、あの変なカラクリがあるから1人で行ったら帰ってこれないかもって思ったんだと思う。


ていうか、そういえば夕は?


振り返っても夕はいない。
奥を覗いてみると、中学生っぽい女の子に話しかけていた。


「朔、あの子誰?」
「あ?……あぁ、夕がはなしてるやつ?
中峰あんず。中学一緒なんだよ、2人とも。
高校俺らのとこ目指してトップ争いしてる良きライバルってやつだな」
「ふーん」
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