綺桜の舞う
◇ ◇ ◇



そもそもの姫野との出会いは1年、入学してすぐの朝。
学校に行こうと部屋を出るとちょうど隣の部屋の人間も一緒のタイミングで出て来て、それが姫野だった。


『あっ、頭いい人!』なんで指差されてなんだこいつ、ってのが第一印象。


その1週間後ぐらいに土砂降りの日があって、家に帰ると部屋の前で蹲る女が1人。
無視して通り過ぎようとすると、制服の裾を掴まれて振り向くしかない状況に。
『何してんの』って聞いたら『友達の家に家の鍵忘れました、泊めてください』なんてバカみたいなことを言い出した。
ちょうどここの大家さんは慰安旅行かなんかでいなくて融通が効かない状況。


『男の部屋とか怖くねーの?』『湊くんはいい人って聞いた』『誰に』『湊くんのクラスの満島さん』なんて会話の後に結局家に入れることになって。


気づいたら姫野は俺の家に通い詰めていた。
最近は食費を折半しているレベルでうちで飯を食ってる。
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