綺桜の舞う
「……違うよ、沙彩ちゃん。僕にはここに残る資格なんてなくて」
「それでも……それでも私は、好きだったのっ!」


近づいて、手を伸ばしてくる陽向の手を、思わず振り払う。


「陽向が何やらかしたって、私は好きだったのっ!
みんなを守る守らないとか、誰かを危ない目に合わせたとか、そう言うのじゃなくて、私は陽向の隣にいたくて、ただそれだけで幸せだった……。


なのに陽向は、私のことも捨てた。
ずっとそばで支えてきたつもりだった、でも陽向には届いてなかった。
私のことも、居場所だって、思ってくれてなかったんでしょ?」


ちがう。
違う、そんなこと、思ってるわけじゃない。
そんなこと言いたいわけじゃない。


陽向は責任を感じてただけで、押し潰されただけで、私の隣にすらも、いられないくらい後悔しただけで、そんなの、私が1番わかってるはずなのに。


ポタポタと涙が流れる。
馬鹿みたいに、止まらないのは、後戻りできないって感じたから。
< 135 / 485 >

この作品をシェア

pagetop