綺桜の舞う
「ね、湊くん」
「ん?」
「好き?」
「うん」
「キスしたい」
「嫌」
「……なんで」


ムッとした声で顔を上げる叶奏。
月明かりで、ふてくされた顔がよく見える。


……当たり前だろ。
俺のこと殺す気か。
二人で寝るって段階ですでに寝れるか心配なのに、いや、睡魔には勝てないから寝れるけどさ。
いや、そうじゃなくて。


……この状態が、もう男には拷問なんだって。


「……キスだけじゃ終わんないから」
「……私はそれでもして欲しい」
「無理。俺が死ぬ。明日の朝にもう一回言って。
おやすみ」


寝起きなら、流石にそんな頭回ってないから。
……いや、頭回ってないからって理性効かなかったらどうしよう。
どっちにしてもダメじゃん。


それでもまぁ、叶奏はふてくされたように眠ってしまった。
……ちょっとの延命は自分の首を締めただけだったかもしれない。
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