綺桜の舞う
「欲しいけど、全く靡いてくれないから」
「叶奏ちゃんに靡かない男なんているんだね?」
「いるよ?目の前に。堅物が」


ね?と俺の目を見て微笑む姫野。
……こいつ、本当に。
周りから固めていくのはどうかと思う。


「あらー。叶奏ちゃんは湊のことが好き?」
「うん。毎日、んぐっ」
「姫野、もうそれ以上言わなくていいから」


俺は姫野の口を手で覆って首を振る。
本当にこの女は、よくもまぁ。


「あんまりペラペラ喋んなくていいから」


姫野の耳元でそうやって囁くと、焦ったようにコクコクと頷く。


俺はそんな姫野を放置して、伊織を引きずって歩き始めた。
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