綺桜の舞う
「あれ、叶奏さん。もしかして組の人間ですか?」
「まさかまさか、姫野、なんて聞いたことがないでしょう?」
「それはそうですね、失礼いたしました」


軽口を叩き合う、熾烈な戦い。
叶奏は性格上相手を仕留めるための一発しか殴らない。それは今までの戦いでよくわかった。
ただ、それは今回、仇になりそうだ。
組の人間は一発殴られたくらいじゃ、倒れない。
それなりに強い。


現に今も、叶奏は押されている。
かわしていても幾らかは食らうし、防御はしていても体力は消耗する。


「叶奏……」
「湊、何があっても出ちゃダメだよ。
叶奏ちゃんの優しさ、踏みにじんなよ」


……わかってる。
叶奏が俺たちに一つの傷もつけないで、帰すための優しさだってわかってる。
優しい叶奏は、敵でも味方でも傷つく人が1人でも減るほうがいい、なんて考える善人。


今回は……叶奏の存在全てが仇だ。


「叶奏さん、打たれ強いのですね」
「そう言う女は、お嫌いですか?」
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