綺桜の舞う
「あぁ、」


倉庫に、背を向ける。
人が近づく気配、さっきの女か。


「あなたが」


凛とした叶奏の声が、背後の気配の動きを止める。


「あなたが私に攻撃するようであれば、それを交戦とみなし、この辺り一帯が焼け野原になろうと、あなたたち1人残らず、私が潰しますけど、よろしいでしょうか」


叶奏は俺の手を握る。
手は震えている、怖いわけじゃなくて、限界が来ているからか。


「……っ、ち…が…」
「次に私たちに手を出すときは、そのつもりで。
1人の女に潰される恐怖を抱いて私たちに殴りかかってください。甘んじて受け入れましょう」


叶奏はそう言って歩き始めた。
俺たちをすら蹂躙して真っすぐ。


そして叶奏は俺のことを見て優しく笑う。


「帰ろう、湊くん」


……。


叶奏を覚醒させたのは明らかに、


───俺だ。
< 175 / 485 >

この作品をシェア

pagetop