綺桜の舞う
俺はパーカーが伸びないように気をつけながらぐっと絞る。


「ん、こんな感じ?」


ついつい、いつもの女の子の癖で、耳元で話しちゃったり、無意識にツーっと背中をなぞってしまったり。
それにすらも反応して、あんずちゃんは勢いよく振り返る。


「あの……っ、伊織さん、チャラくないですか?」
「まぁ?それなりにケーケンホーフだよ?」
「……顔、近い」
「あんずちゃんは慣れてない感じがまだ可愛いね?」


そんなことないです、とムッとした表情で歩き出すあんずちゃん。
俺はスマホだけ持って、彼女についていく。


「……伊織さん、タバコ臭いです」
「ん〜?」


あんずちゃんは俺の隣を歩きながらそんなことを言う。
タバコ、うーん。


「ここ3日は吸ってないよ」
「身体に染み付いてるんじゃないですか?
……私、タバコアレルギーなので、私の前で吸わないでくださいね」
「1人の時しか吸わないよ」
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