綺桜の舞う
「……うぅ」
「また行こうな。今回は多分、入れないから。
最終日くらいなら、外に出るくらいはできるかもだけど」


あまりにもひどい怪我、さらけ出せるほど軽いものじゃない。


身体中に傷を作って、身を挺して俺たちを守ってくれた叶奏には酷だけど、今回は動けないだろうな。


「湊くん、いてくれる?」
「あぁ」
「絶対だよ?離れちゃダメだよ?」
「あぁ、わかってる」


顔にほとんど傷がないのが唯一の救いというか。
それ以外はもう酷すぎる傷に目を逸らしたくなる。


俺は叶奏の唇にキスを落として、叶奏の隣に寝る。


「湊くん……」
「ん?」
「寝返り打って私のこと潰すとか、何がなんでもやめてね?」
「……殴るぞ」


叶奏はすぐに眠りについた。


……。


昨日のことを思い出す。


あの目は、いったい、どこで覚えてきたんだろうか。
叶奏の家が組とか聞いたことがないし、実際あの家にはそんな雰囲気すらなかった。
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