綺桜の舞う
呆れる叶奏。
あんずって言ったら確か、夜桜の夕の友達だったか。
……なんだったか。


「そっかそっか、うん」


俺たちは軽く食事を済ませて部屋に戻ると俺は普段の薬、叶奏はドーピングとか言いながら、痛み止めを飲んでいた。


「バルコニー行こ、みんな見えるかも」


叶奏はひらひらのロングスカートを揺らして俺の手を引く。
普通に動けているのが異常なくらいの傷だったはずなのに。


「叶奏、無理はすんなよ?」
「しないよ?せっかく甘えさせてくれる人がいるのに、無理はしないよ」


そう言いながら、叶奏は広間の大きな窓を開ける。
さぁっと、海風が横切って、3日前に見た海に、みんながいるのが見える。


「楽しそうだな……」
「明日は出てみる?」
「……いいの?」
「海に入らなきゃいいんじゃない?
あと短時間。あんま日光に当たって何かあっても困るから」


傷口に砂すり込むようなことがあってもダメだし。


「いいのいいの?本当に行っていい?」
「あぁ、水着は止めろよ」
「うんっ!ありがとうっ」
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