綺桜の舞う
キス、してこなくなった。
と、思ったら。


「うぅ……」


泣き出した。


「……今度はどうした」
「湊くん、キスやなの?」
「嫌」
「なんで……」
「キスだけじゃ終わんなくなるじゃん、普通に。
叶奏の身体ボロボロなのに、俺気遣えないからしたくない」
「んんんんんん」
「あと眠い」


駄々を捏ね出す、叶奏。
これはもうただのタチの悪い酔っ払いだ。


「好き……?」
「うん、好き」
「……好き」


叶奏は泣きながら俺の身体を引き寄せて抱きしめるとベッドにパタン、と倒れる。


……3秒後に寝てた。


ふぅっと、息をつく。
どーせ覚えてないんだろうな、と思うと、俺の心労が重なるだけだが、とりあえず……滅多にないことがあって、少しだけ嬉しかった気もする。


いつもは、『チューして!』『キスして欲しい……』って駄々こねてるだけで叶奏から、なんてこと滅多にないから。
部屋に誰もいなけりゃ、素直に嬉しかったよ。
誰もいなかったらだけど。


俺は叶奏を抱きしめて目を閉じる。
男どもの卑猥な話を聞かれてなくてよかった、と心から思った。


……そういえば、今頃陽向と有村は修羅場だろうか。
頑張ってくれ。主に雪兎。
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