綺桜の舞う
「叶奏」


すると突然。
どさっと、上から何かが降ってきて、姫野が視界から消えた。
地面に潰されていた。


「ゆ、夕?痛いよ?」
「ごめん」


……誰だこいつ。あれ、夕ってこんなキャラだっけ。
いつもはもっと無口で、クールで。
尖ってて。


「……叶奏、久しぶり。会いたかった」
「夕今日も可愛いねぇ。そんなに私に会いたかった?」
「……ん」


こんなツンデレみたいなデレ方してるの初めて見たんだが。


「叶奏……またバイクの後ろ乗せて欲しい」
「う、うぅ……ん、あの。この前コケてユキに鍵取られちゃったから、返してもらってからね」
「……ん」


寂しそうに眉を潜める夕は、普通に姫野より身長は高い。
ギュッと抱きついて、首筋に顔を埋める。


「叶奏、ちゃんとご飯食べてる?」
「うん。毎日湊くんが作ってくれるよ?」
「ん……」


ちゃんと食べなよ、と姫野の背中に回す手に力を入れる。
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