綺桜の舞う
でも。


……帰ろかな。
気分的に。心、痛い。


私は諦めて立ち上がる。


「夜遅くにごめんね、帰る」
「……そ」


無駄に声が震えてしまって、いつもの陽向だったらどうしたの、って言ってくれるのに、大丈夫?とか、沙彩ちゃんって名前呼んでくれるのに。


……はぁ、しんど。


私は玄関で靴を履く。


今から帰るのもアレだし、というか病んじゃいそうだし。
今から叶奏の家行ってもいいだろうか。
それとも湊くんの寝る時間に合わせてもう寝ちゃってるかな?
大人しく帰った方が身のため?


と、ぎゅっと背中に温もり、陽向が背中に抱きついてきた。


「……ごめんなさい、帰んないで」
「陽向?」
「あの、ちゃんとお話ししたい、から……帰んないで」


何故か陽向が号泣。
いや、泣きたいのは私……いや、陽向で合ってるのか。


私は陽向の手を握って振り返る。
ちょっと陽向の方が小さい。
< 230 / 485 >

この作品をシェア

pagetop