綺桜の舞う
「んー、じゃあ俺が毎日話し相手なってあげるよ?」
「伊織さんも一緒に卒業じゃないですか」
「あんずちゃんがお望みなら何年でも留年するかな」
「……そんな、悪いです。普通に卒業して大学でもなんでも行ってください」
「あー……俺大学行かないよ?親いないし」
「……へ、」
「俺、こう見えて一応施設の人間だから。親いないし、ずっとここに寝泊りしてるけどね」
俺は軽くそう言って見せる。
別に親がいないからどうとか、施設暮らしだからどうとか、そういうのは隠す気ないし、別に同情してもらおうとかそういうのもない。
なんなら、今まで引き取りますよ、みたいな優しいことを言ってくれる人もいたけど、俺が無理やり押し切って断ってきた。
「……そうなんですね」
「うん、だから高校卒業したら働くだけだし、毎日あんずちゃんの送り迎えしてあげるよ?」
「……考えときます」